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第4話 旋風せんぷう覚醒めざめ 前編(1)

いつも同じように森や人々を照らしていた光が朝を告げる・・・しかし、そこに今日もまたあるはずだった人々の生活はもうここには無い・・・今ここにあるのは黒くげた建物の残骸ざんがいと辺りを包むげ臭いにおいだけだった。その静まり返った村にひびいたギギギッという音で目を覚ましたナイト・・・音のした方向に思わず視線を向けた。

ミオアイコン

「おはよう、少しは落ち着いた・・・?」

そこにいたのは黒くげた木片を持ったミオの姿だった。

ナイトアイコン

「おはよう・・・」(いつの間に朝に・・・)

ミオアイコン

「昨日、本当はあれから寝付けなかったんでしょ?・・・」(寝付けない時ほどねむった時のねむりの深さは深いから・・・)

ナイトアイコン

「え・・・いや、俺は大丈夫・・・」

ミオアイコン

「そう・・・ならいいけど・・・」

ミオアイコン

「起き抜けで悪いけど、ナイトも手伝って?1人じゃ何日かかっても終わる気がしない・・・」

ミオアイコン

「私はナイトの知り合いが何処どこにいそうなのかもわからないから・・・」

ミオアイコン

「・・・?」(あの瓦礫がれきの辺りからかすかに人の残留思念ざんりゅうしねんを感じる・・・)

ミオは持っていた木片を軽く放り投げ再び瓦礫がれきの山へ向かい片付け始めた・・・。

ナイトアイコン

「いや、それは1人じゃ無理なサイズ」

急いでけ寄るナイト、ミオは自分の身長を優にえる木片を引き抜こうとしていたからだった・・・ミオが木片を引き抜いたその瞬間しゅんかん足元の瓦礫がれきが重さにえきれずくずれ落ちる・・・。

ミオアイコン

「あ・・・」

バランスをくずし倒れそうになったミオの背を何かが支えた・・・。

ナイトアイコン

「間に合った・・・」

安心したように息をつくナイト。

ミオアイコン

「え・・・ありがとう・・・?」(あれ・・・さっきこんなに近くに居たっけ・・・)

ナイトアイコン

「ミオって・・・無茶なことよくするよな・・・」(こういう所見た感じ・・・普通の人間の女の子だよな・・・)

ナイトアイコン

「・・・」(でも・・・昨日のドラゴン・・・なぜ人間として生きている?って言ってたよな・・・あれってどういう意味なんだ???)

ミオアイコン

「別に無茶した記憶はないんだけど・・・」

体勢を立て直しミオはつぶやいた。

ナイトアイコン

「いや、してるだろ・・・」

ナイトアイコン

「今だって目の下に若干じゃっかんくま出来てるし・・・ミオも寝れてないんじゃないか?」

ミオアイコン

「いや私はただ長く眠る習慣がないだけ・・・」

そんな2人を離れた木の上からていたチェリー・・・。

チェリーアイコン

「確かにミオの言っていたとおり、ナイトはものすごいスピードで成長してる・・・」

チェリーアイコン

「・・・」(それに・・・一緒にいる時、なんかミオも楽しそう・・・)

チェリーアイコン

「・・・」(人の優しさを知れば何かかわ・・・)

そんなことを考えながら再び2人に目を向けたチェリー。

ミオアイコン

「私としたことが・・・」(人に助けられるとは・・・しかも2回目・・・)

何やら急に暗い雰囲気ふんいきになったミオにナイトがあわてているようだ・・・。

ナイトアイコン

「急にどうしたんだ・・・?」(俺?俺なんか悪いこと言った??)

チェリーアイコン

「あはは・・・ミオが変わるのには時間が必要かも・・・」(ミオはもう少し人を頼ることを覚えた方が)

そんな時だった、突然とつぜんに辺りをただよっていたげ臭さを吹き飛ばす程の風が吹き抜ける。

ミオアイコン

「・・・!」

先ほどまで何やらへこんでいたミオが何かに反応した・・・。

ミオアイコン

「この風は・・・?」

ナイトアイコン

「???」(ミオ?・・・さっきの何だったんだ・・・)

木の上にいたチェリーもその風に反応しけ出す。

チェリーアイコン

「見つけた!」

何かを追いかけるようにチェリーは森の木を飛び移りながら奥へ消えて行った。

ミオアイコン

「どうやら、見つかったみたいね・・・」

ナイトアイコン

「見つかった・・・?そういえばチェリーはずっと木の上に居たみたいだけど・・・何してたんだ?」

ミオアイコン

「チェリーにはちょっと探し物をしてもらってた」

ナイトアイコン

「探し物?って・・・何を探してたんだ?」

ミオアイコン

「まだナイトには教えられない・・・どうなるか分からないから・・・」

ミオアイコン

「でもの内わかるよ」

ナイトアイコン

「え、何でだよ」(すっげー気になる・・・)

ミオアイコン

「秘密だから」

ナイトアイコン

「なるほど・・・秘密だからか・・・ってなる訳ない・・・」(って、あれ・・・)

ミオアイコン

「ナイト、何でそんな所に立ってるの、次の家行くよー」

少しナイトが目をらしていた間にミオは次の場所へ移動していた・・・。

ナイトアイコン

「あっ、もっ待ってって!」

そんな風に2人が過ごしている頃・・・森の中をその探し物を追いかけ走るチェリー・・・。

チェリーアイコン

「ちょっと、待っててば」

そう言った直後チェリーは動きをピタッと止めた・・・。

見えない精霊アイコン

「お前は村に来ていた娘の・・・何の用だ?」

森の中、姿は見えないが声だけが響く。

チェリーアイコン

貴方あなたはナイトと仮契約かりけいやくしてる精霊でしょ?だったらナイトと正式に契約けいやくしてあげて欲しいの!」

無言になったのち再び声が聞こえてきた。

見えない精霊アイコン

「お前は何故なぜ、人間と精霊せいれい仮契約状態かりけいやくじょうたいになるか分かるか?」

チェリーアイコン

「人間のほとんどは精霊せいれいの存在を認識できないから・・・」

見えない精霊アイコン

「その様な相手とどうやって契約けいやくしろと言う?ナイトがお前の契約者けいやくしゃの様な特別な者ならば話は別だが」

その声にチェリーは自信を持って答えた。

チェリーアイコン

「ナイトは特別だよ、だから絶対契約けいやくできる!」(というか、させる私達が)

見えない精霊アイコン

「お前・・・名は何という?」(その自信に根拠はあるのか・・・?)

チェリーアイコン

「チェリーだよ」

見えない精霊アイコン

「そうか・・・美味そうな名だな・・・」

チェリーアイコン

「え・・・?」

第4話 旋風せんぷう覚醒めざめ 前編(2)

「ん?、すまない・・・私はヴァンリートだ」

見えない精霊アイコン

「チェリー、精霊せいれいであるお前がそこまで言うからには何か理由があるのだろうな?」

チェリーアイコン

「もちろん!ねえヴァンって呼んでいい?」(名前長いし・・・)

見えない精霊アイコン

「好きに呼べばいい・・・」

見えない精霊アイコン

「早く行くぞ」

チェリーアイコン

「へ?」

見えない精霊アイコン

「私の契約者けいやくしゃは私が決める・・・見極みきわめさせてもらうとしよう」

チェリーアイコン

「本当は契約けいやくする気満々のくせに」

見えない精霊アイコン

「何だ?」

チェリーアイコン

「何でもないよ」

白々しらじらしく応えるチェリー。

そんな話をしつつチェリー達は村を目指し来た道を引き返しだした頃、ミオ達は丁度ちょうど瓦礫がれきの片付けを終えた頃だった・・・。

ミオアイコン

「案外、早く終わった」(それにしてもチェリー遅いな・・・)

ナイトアイコン

「結構探したけど・・・遺骨いこつらしい物はあんまり見つから無かったな・・」

ミオアイコン

「確かに・・・ほぼ無いのと変わらないね・・・この量・・・」(まさか食べられてしまったの・・・?)

ミオアイコン

「・・・はぁ・・・」

ナイトアイコン

「・・・ハァ・・」

思わずため息がれる。

ナイトアイコン

「それにしても・・・俺達・・・よくこれ骨って分かったよな」

ミオアイコン

「全くね」(これ漢方薬の原料って言われたら私・・・信じそう・・・)

ミオは骨のカケラをながめながらたずねる。

ミオアイコン

「この骨どうする?埋める?あまりにも小さいし・・・もうあえて散骨とかに・・・する?」

ナイトアイコン

「・・・やっぱり、墓を作って埋めてやりたい・・・ここはつらい場所になってしまったけど・・・それ以上に皆んなが楽しく暮らしていた場所だとも思うしな・・・」

ミオアイコン

「それは・・・そうよね」

辺りを見回した後・・・。

ミオアイコン

「この村に穴をれそうな物って残ってないかな・・・」

ナイトアイコン

「・・・・・・なさそ・・・・・・ん?」

ナイトが何かを見つけひろい上げた・・・。

ナイトアイコン

「これ・・・使える・・・かな?」(まだ・・・かろうじて・・・)

手にしていたのは・・・黒くげたスコップだったのではないかと思われる物体・・・。

ミオアイコン

「無理・・・絶対」(何故なぜ・・・くの字に曲がっている・・・)

ナイトアイコン

「だよな・・・」(どうすれば・・・)

落胆らくたんするナイトを見つめていたミオ・・・。

ミオアイコン

「・・・今のナイトなら使えるかも知れない」

そう言ってミオは前へ手を伸ばした直後に桜の花びらと共にスコップが出現した・・・。

ナイトアイコン

「!・・・具現化ぐげんかって・・・武器以外もできるのか・・・?」(できるなら先に教えてくれても・・・)

ミオアイコン

「うん、一応出来るけど、あんまりする人はいないと思う」

ナイトアイコン

「何で?便利そうなのに・・・」

ミオアイコン

「もともと契約けいやくは戦闘において生存確率を高めるために造られた仕組み・・・だからその力で日用品を具現化ぐげんかする人は少ないと思う」

ナイトアイコン

「そうなのか・・・」

ミオアイコン

「まぁ、それは置いといて・・・問題はここから」

「前にも話した通りナイトは仮契約状態かりけいやくじょうたいなんだけど、その少ない精霊せいれいの力を借りて武器を具現化ぐげんかできた・・・」

ナイトアイコン

「ん?確か普通は仮契約かりけいやくの状態じゃ武器の具現化ぐげんかはできないって言ってたよな・・・」

ミオアイコン

「そう、通常ならできないはずだから他の人より力の使い方が上手いんだと思う」

ナイトアイコン

「よく分からないけど、俺もミオみたいに武器が使えるようになるかも知れないって事か?」

ミオアイコン

「できるようになると思うけど、確実にできるようになるか・・・それを今から確かめる・・・」

それまでと少しミオの雰囲気ふんいきが変わった・・・。

ナイトアイコン

「・・・で・・・確かめる方法って」

そうたずねたナイトにスコップを差し出すミオ・・・。

ミオアイコン

「これを・・・持ってみて」

ナイトアイコン

「このスコップを・・・?」

ミオアイコン

「そう、このスコップは私とチェリーの力で具現化ぐげんかしてる・・・」

ミオアイコン

「ナイトが今武器を使える力を身につけているとすれば他者が造った武器でも少しの間は形を保っていられるはず・・・」

ナイトアイコン

「使えない人間なら・・・?」

ミオアイコン

即座そくざに消える・・・いや・・・多少痛いかも・・・」

ナイトアイコン

「なんか・・・だいぶふくみあるな・・・」

ナイトアイコン

「でも、やってみなきゃわからないよな」

ミオの言葉聞いたナイトは不安を感じつつも静かに意識を集中させミオの持っていたスコップを手にした・・・。

ミオアイコン

「・・・!」

ナイトアイコン

「・・・!」

ナイトアイコン

「・・・消えない・・・!」

ミオアイコン

「体に違和感いわかんとかはない?」

ナイトアイコン

「何かちょっとピリピリするけど、他には特にない」

ミオアイコン

「そう・・・良かった」(・・・スコップで試してみて良かった・・・武器だったら拒絶反応が強かったかも知れない・・・)

ミオアイコン

「・・・取りえず使ってみて?」

ナイトアイコン

「え、あぁ・・・そうだな」(俺・・・合格・・・なのか?)

そう言いながらり出そうとした時だった・・・。

東の川の方からすさまじく大きな音がした!。

ミオアイコン

「!!!」

ナイトアイコン

「何だ、今の・・・」

2人が川の方角を見ると・・・信じられない高さの水しぶきが上がっていた・・・。

ナイトアイコン

「川って爆発するんだっけ・・・?」

思わず顔を見合わせる2人。

ミオアイコン

「あまり良いことは起こりそうにない・・・」(あの方角にはチェリーが・・・)

丁度その頃、川付近にいたチェリー達・・・。

チェリーアイコン

「いきなり大量の水が降ってきたぁー!!?」

体をブルブルとふるわせ体の水を落とすチェリー 。

見えない精霊アイコン

「何だ今のは・・・?」(!・・・この気配は・・・まさか!)

第4話 旋風せんぷう覚醒めざめ 中編(1)

チェリーアイコン

「でも、村はもうすぐそこだよ」(走ればきっと・・・)

再び前へ進みだしたチェリー達の背後から地響じひびきとバキバキという音と共に木をぎ倒し何かがせまってくる・・・。

その気配に思わずチェリーが振り返る。

大蛇の頭5アイコン

「シャー」

そこには目一杯口を開けた大蛇がいた・・・。

チェリーアイコン

「・・・!!!」(嘘・・・)

大蛇はバクンと勢いよく口を閉じた・・・。

チェリーアイコン

「・・・」(ヴァンの声が聞こえる気がする・・・)

見えない精霊アイコン

「おい、大丈夫か・・?一応言っておくが、お前死んでないぞ・・・」

チェリーアイコン

「はっ・・・え、あれっ?さっきの夢?」(何か空飛んでるしー)

どうやら噛み付かれる寸前でヴァンに救われたようだ・・・。

見えない精霊アイコン

「・・・ある意味、悪夢だな・・・あいつにとっても」

見えない精霊アイコン

「蛇はネズミが好物みたいだしな・・・」

チェリーアイコン

「私はネズミじゃなくて一応リスの種類なの!」

見えない精霊アイコン

「いや、見た目ネズミだから変わらんだろう・・・」

チェリーアイコン

「ところで・・・あいつって・・・?」

見えない精霊アイコン

「下を見ろ・・・」

そう言われ下を見るチェリー、その眼下に広がっていたのは木が倒れ何かが蛇行して通った後だった・・・。

チェリーアイコン

「じゃあ、さっきのは・・・?」(夢じゃない・・・)

見えない精霊アイコン

八岐大蛇やまたおろち・・・思いっきり私の森を破壊はかいして行ったな・・・」

見えない精霊アイコン

「急ぐぞ、奴の目的地は私達と同じ場所のようだ・・・」

チェリーアイコン

「え?何故なぜ?」

見えない精霊アイコン

「知らんな、本人に聞くか?」

チェリーアイコン

「嫌!絶対!反対!」(食べられる・・・)

後方から追うチェリー達・・・、その頃・・・前を進んでいる八岐大蛇やまたおろちは食事を取り損なったことをやんでいた・・・。

大蛇の頭5アイコン

「ピンクのねずみ・・・食い損なったな・・・」

大蛇の頭1アイコン

「仕方あるまい・・・ストーム・・・あの大鷲おおわしがいたからな・・・」

大蛇の頭5アイコン

「人間気触かぶれの精霊か・・・」

大蛇の頭8アイコン

「ふっ、そもそもあのサイズのネズミなど何の腹の足しにもならぬわ・・・」

大蛇の頭3アイコン

「お前ら、少しは黙れ!」

大蛇の頭3アイコン

「もうすぐ森を抜けるのだぞ・・・」

その頃ミオ達は水しぶきの上がった方角を見つめ只々ただただ困惑こんわくしていた。

ナイトアイコン

「なぁ・・・俺、目おかしくなった気がする・・・」(何か木が・・・近づいて来てる気が・・・)

ミオアイコン

「大丈夫、おかしくないから・・・」(嫌な感じ・・・)

目の前で森の木々が次々と音を立てて倒れていく・・・まるで山が押し寄せてきている様な光景だ・・・。

もう少しでその正体が分かるそんな時だった、先ほどまでひびいていた地響じひびきがピタリと止んだ。

ミオアイコン

「・・・聞こえる?この音・・・」

ナイトアイコン

「聞こえる・・・何かが地面をってる・・・!」

わずかだが確かにズルズルという音が聞こえている。

ミオアイコン

「・・・」

ナイトアイコン

「・・・」

2人はゆっくりと背中合わせになった・・・。

ナイトアイコン

流石さすがに・・・スコップでどうにかなる気はしない・・・」

不安そうにしているナイト・・・。

ミオアイコン

「取りえずナイトは敵の動きを見切って、回避かいひに集中して・・・」(まさか・・・いきなり実戦になるとは・・・)

ナイトアイコン

回避かいひって・・・どうやって!?」

ミオアイコン

「バク転、側転、前転・・・とか?ければ何でも大丈夫・・・攻撃を考えるのはけて余裕よゆうがある時だけでいい」

ナイトアイコン

「それ、いきなり出来ることじゃないだろ!」

ミオアイコン

「ナイトはできるよ、け方はナイトの体がもう覚えてるから・・・」

ナイトアイコン

「???」(どういう意味・・・)

ミオアイコン

「・・・来る!」

ナイトアイコン

「!!」

大蛇の頭2アイコン

「シャー」

草の間から蛇の頭が飛び出し2人に喰らい付こうとしたがそれぞれ左右に飛び退き難を逃れた。

その頭のから胴体の方へ視線を向けた先にあったのは頭尾とうびが8つある大蛇の姿だった・・・。

ナイトアイコン

「背中に木が・・・いや翼?」(あれが木が動いてるように見えた理由か・・・)

ミオアイコン

「・・・頭の数とかは気にならない?」(大体おどろくのそっちじゃない?・・・それにしても・・・八岐大蛇やまたおろちとは)

ナイトアイコン

「いや、別に・・・」(あの翼・・・邪魔そうだなと・・・)

そんな会話をしている2人・・・。

大蛇の頭7アイコン

「貴様ら・・・我らを愚弄ぐろうしているのか?」(そもそも奴は何故なにゆえスコップなぞ持っている・・・)

ミオアイコン

「いや」

ナイトアイコン

「別に・・・」

大蛇の頭4アイコン

「ますます頭に来る連中だな・・・」

大蛇の頭8アイコン

「まあよい、そんなことより兄者のかたきだ!」

大蛇の頭6アイコン

「ミオ・フローラ、貴様は我らが喰らう!」

ミオアイコン

「・・・かたき?」

ナイトアイコン

「ミオ・・・兄さんに何をしたんだ?」

しかし、ミオは何やら考え込んでいる・・・。

ミオアイコン

「・・・」(うーん、思い出せない・・・そもそも兄って・・・誰)

大蛇の頭8アイコン

「忘れたとは言わせんぞ・・・マッドカーサで貴様が食事をしようとした兄者の首をではねたのを!」

そう声を荒らげた八岐大蛇やまたおろちの言葉で思い出したように。

ミオアイコン

「マッドカーサ?ってもしかして・・・貴方のお兄さんって・・・ヒュドラ!?」(あぁ、納得)

ナイトアイコン

「首・・・切っちゃったの?・・・」(すごいな・・・色んな意味で・・・)

大蛇の頭8アイコン

「そうだ・・・腹を空かせ兄がやっと見つけたご馳走ちそうに喰らい付こうとした時だ!貴様が突然現れ兄の首をはねたのだ」

ナイトアイコン

「そりゃ怒るかも・・・」

第4話 旋風せんぷう覚醒めざめ 中編(2)

ミオアイコン

「そう言えばヒュドラも頭8個あったかも・・・」(今は増えて9個だけど・・・)

大蛇の頭5アイコン

「しかも貴様は兄が喰らおうとした小娘を逃しおった!」

ナイトアイコン

「えっ、小娘?人間食べようとしてたのか?」(鹿か何かだと思ってた・・・)

ミオアイコン

「そう、8歳の女の子・・・」

そう言い、一瞬いっしゅんミオの表情がくもったものの直後に冷たく鋭い視線で大蛇を見据みすえる。

ミオアイコン

貴方あなたは私を食べた後、そこにいるナイトはどうするつもりなのかしら・・・?」

大蛇の頭4アイコン

愚問ぐもんだな、こんな旨そうな肉を何故なにゆえ我らが喰らい損なわなければならない・・・」

ミオアイコン

「そう・・・」

その答えを聞くやいなや一番近くの大蛇の頭に忍刀を突き立てた。

大蛇の頭6アイコン

「シャー!!」

八岐大蛇やまたおろちも思わず声を上げる。

ミオアイコン

「いつかの約束のため、貴方あなたを放って置く訳にはいかない・・・」

ミオアイコン

「今度はお兄さんが弟のかたき打ちに来ることになりそうね・・・」

頭部に突き立てた刀を引き抜きながらミオは言った。

大蛇の頭8アイコン

「貴様!骨まで喰らってくれるわ!」

ミオ達が対峙している場所が見える木の上まで辿たどり着いたチェリーとヴァンリート。

チェリーアイコン

「ミオ達は?」

見えない精霊アイコン

「無事のようだぞ」(・・・ん?)

見えない精霊アイコン

「・・・?・・・何故なぜ、お前の契約者けいやくしゃはナイトにスコップを?」

チェリーアイコン

「ナイトが武器をあつかえるようになるか確かめるためだと思う」

見えない精霊アイコン

「それにしても何故なぜ・・・普段から使っている武器ではなく・・・スコップ・・・???・・・ん!?」

ヴァンは何か気づいたようだ・・・。

見えない精霊アイコン

「そういうことか・・・納得した・・・」

見えない精霊アイコン

「普段から武器として造るものは自然と武器への思い入れが強くなる・・・」

チェリーアイコン

「そう、元々具現化する武器は使用者のイメージで形作られ込められた意志や思いの強さで武器の強度も切れ味も変化するもの」

チェリーアイコン

熟練じゅくれんした武器ほど凝縮ぎょうしゅくされる力が大きくなり高いエネルギーを宿すようになる」

見えない精霊アイコン

「そんな力のかたまりを、力の備えていない者に渡せば器がたええきれないか・・・」

見えない精霊アイコン

「しかし、お前の契約者けいやくしゃはたいした奴だな・・・」

チェリーアイコン

「?」

八岐大蛇やまたおろちが噛みつこうと首を伸ばすも後方に飛び退く回転を利用し具現化した巨大手裏剣しゅりけんを打っている・・・

打った手裏剣しゅりけんにより2本の首が沈黙ちんもくするもいまだ身体をおおう鎧のようなうろこはばみ中々数が減らない、たとえ頭の1つを斬り落とそうともひるむのは一瞬いっしゅんで他の頭がすぐに動き出してしまう・・・

そんな戦いの中1つの頭がナイトにねらいをさだいきおいよく喰らいついた・・・はずの蛇の頭から出血しているようだ・・・。

ミオアイコン

「!・・・良い使い方ね」

蛇の頭にスコップが刺さっている!。

ナイトアイコン

「生きた心地がしなかった」

大蛇の頭2アイコン

「スコップ!?だと・・・」

大蛇の頭1アイコン

「お前、スコップが頭に!?」

流石さすが八岐大蛇やまたおろちもスコップが頭に刺さる日が来るとは思ってもいなかった・・・。

その様子を見ていたヴァンリートはチェリーにたずねる。

見えない精霊アイコン

「お前の契約者けいやくしゃはどうやってナイトに回避かいひの方法を教えたんだ?」

チェリーアイコン

「多分、ミオは口では何も教えてないんじゃないかな・・・ただ・・・」

見えない精霊アイコン

「ただ・・・何だ?」

チェリーアイコン

瓦礫がれきの片付けをしていただけだよ」

見えない精霊アイコン

瓦礫がれきの・・・片付け???」

チェリーアイコン

瓦礫がれきの片付けでも色んな感覚がみがけるんだって」

見えない精霊アイコン

「片付けで一体何が身につくというのだ・・・」

「この村の瓦礫がれき黒焦くろこげですごくこわれやすくて足を置く場所を間違えると直ぐ折れちゃうから自然と足の置き場とか折れやすい木を見極めたりとかで注意力が上がりやすいみたい」

見えない精霊アイコン

「・・・他には?」

チェリーアイコン

「不安定な足場だから何もしていないようで意外と体感のトレーニングになってるんだって、他にもあった気もするけど大体そんな感じ・・・」

見えない精霊アイコン

「まぁ、言われてみれば・・・そんな感じはしなくは無いが・・・」(普通の人間にはスパルタ過ぎるのではないか?)

チェリーアイコン

「多分、普通の人にはきびしいかもね、だってミオがナイトを見て決めたことだから・・・」※良い子は真似マネしないでね

見えない精霊アイコン

「ナイトを見て?」

チェリーアイコン

「うん、ナイトは反射神経と運動神経どっちも良いみたいだし、何より飲み込みが早そうだから少しコツが分かればすぐにできるようになるはずって」

見えない精霊アイコン

「あの時のナイトをみてよくそう思ったな」

チェリーアイコン

「うふふ、でもナイトはちゃんと戦えてるよ」

見えない精霊アイコン

「ふっ・・・そうだな・・・」(私は甘くみすぎていたのかも知れんな・・・)

その間にも八岐大蛇やまたおろちの攻撃は止まず・・・その眼光は武器を持たないナイトに向けられていた。

大蛇の頭1アイコン

小賢こざかしい小僧め!先に貴様から喰らってやる!」

そう言い放ち地面をすべるように近づいて来る・・・ナイトの目の前で頭を持ち上げた時だったその蛇の前に横から何かの影が飛び出してきた!。

大蛇の頭1アイコン

「何!!!」

突然目の前に飛び出してきたのは他でも無いミオだった・・・。

ナイトアイコン

「ミオ!?」(何で・・・)

大蛇の頭1アイコン

「馬鹿め!血迷ったか!わざわざ喰われに来るとはな!」

そう言いあごを外し口を大きく開けた蛇の頭に向かって勢いよく地面をり飛び上がったミオは蛇の頭をみつけそのまま胴体どうたいの方へと首をけ上がって行き真ん中の頭にりかかったミオ。

しかし・・・それと同時にキーンという金属のような音がひびき渡った・・・。

「!!!」(この頭だけかたい!?)

かたい首にはじかれ落下していた時に斜め上から何かがミオの身体にはげしく振り下ろされた。

飛ばされたミオは残っていた瓦礫がれきの山に落下した・・・。

ミオアイコン

「!!!」

ナイトアイコン

「ミオ!」

チェリーアイコン

「!!」

見えない精霊アイコン

「!!!・・・」(あの場所は・・・)

振り下ろされたのは、よくしなる大蛇の尻尾だった・・・。

ナイトアイコン

「ミオ!大丈夫か!?」

瓦礫がれきから立ち上がったミオにけ寄ったナイト、ミオは脇腹わきばらおさえながら。

ミオアイコン

「私は大丈夫・・・」

そう答えたミオの脇腹わきばらは出血し手は赤く染まっていた・・・背後にそびえる折れた木片も只々ただただその身を赤く染めている・・・

第4話 旋風せんぷう覚醒めざめ 後編(1)

ナイトアイコン

何処どこが大丈夫なんだ!」

しかし、それ程までの深傷ふかでを負っているにもかかわらず・・・。

ミオアイコン

「ナイト、敵に背中を見せるのは危険なの・・・」

ミオアイコン

「大丈夫だから・・・前を見て・・・」(ここで私が倒れるわけにはいかないの・・・)

そう言うとミオは再び静かに忍刀をかまえる・・・。

そして無論むろん大蛇おろちが攻撃の手をゆるめる事はない。

ナイトアイコン

「もう一度だけでも良い・・・俺に武器が出せれば・・・」

そんな様子を見ていたヴァンリートもまた、もどかしさを感じていた・・・。

見えない精霊アイコン

「あの娘の精神力は何だ?一体どれ程の死戦をえ・・・生きればあんな事になる?」(だが、このまま戦いが長引けば・・・おそらくは失血死する)

見えない精霊アイコン

「・・・、私とナイトの契約けいやくさえ成立すれば状況は変えられるかもしれないが・・・」(どうすれば・・・)

そんな思いをかかえていたヴァンのとなりでうずうずしていたチェリーが近くを一瞬いっしゅん通った大蛇おろちの頭に飛び移った!。

大蛇の頭2アイコン

「さっき食い損なったねずみ!」

ミオアイコン

「チェリー!」(・・・・食べられそうだったの?)

頭に飛び乗ったチェリーは暗器を大蛇おろちの目に突き立てた。

大蛇の頭2アイコン

「クシャー、目が」

チェリーアイコン

「言い忘れてたけど私はねずみじゃなくてリスなの!」

大蛇の頭1アイコン

「目ぐらいでさわぐな」

大蛇の頭1アイコン

すでわれとなりの頭はないぞ!」

チェリーをり落とそうとはげしく首をり回しているがチェリーはしがみついて落ちる気配はない・・・。

そんなチェリーを見ていたヴァンリートもまたナイトの元へ飛び立った・・・。

見えない精霊アイコン

「私は・・・見えるようになるまで何もせずにいるつもりだった・・・」

見えない精霊アイコン

「そして何処どこかであきらめていた・・・人と共に歩める日は来ないと・・・だが」

見えない精霊アイコン

「自ら動かなければ変わらない未来みらいがあるのかも知れないな・・・」

既にかわすので精一杯せいいっぱいなミオ・・・。

そんなギリギリの状態で戦い続けているミオを見ていたナイトは共に戦う事のできない自分に苛立いらだっていた・・・。

「俺にもっと力があれば・・・精霊せいれい契約けいやくできるだけの力が・・・」

そうつぶやこぶしった時だった、ナイトの周囲をはげしい風が吹き荒れた。

ミオアイコン

「!!・・・これって」(まさか・・・)

ヴァンリートアイコン

「ほう、こんな形で契約けいやくできるとは・・・」(意思の共鳴きょうめいというやつか?)

大蛇の頭3アイコン

契約けいやく・・・だと?」

ナイトは自らの目を疑った・・・先程まで何もいなかった場所に巨大な大鷲おおわしが現れたのだ。

ナイトアイコン

「3本足のわし?」(デカい・・・)

ヴァンリートアイコン

「ん?見えているのか?ならば問題はないな・・・」

あまりの事に状況を飲み込めないナイトにヴァンリートは言う。

ヴァンリートアイコン

「何をぼさっと立っている?早くしないと大切な友が死んでしまうぞ?」

その言葉に少しあわてた様子のナイト。

ミオアイコン

「私は・・・まだ死ぬつもりはない・・・」

噛みつこうとした蛇を斬り付けた後、ひざをついたミオに蛇の口がせまる・・・

ミオアイコン

「・・・・・・」(目がかすむ・・・)

ミオの体力はとうに限界をえていた。

大蛇おろちみついたのはうでだった・・・

ミオアイコン

「!!?」

ミオのかすんで良く見えない目でも分かった・・・自分をかばいナイトがまれたことが・・・。

ミオアイコン

「なぜ・・・」

大蛇の頭7アイコン

「風が邪魔じゃまで食いち切れなかったか・・・」

ヴァンリートアイコン

「風の防壁ぼうへきが無ければうでを持っていかれていたぞ・・・」(全く・・・そろいもそろって無茶な連中だな・・・)

大蛇の頭7アイコン

「自分を盾に小娘をまもった?感動的な話だな!ならば2人一緒にが腹の中で暮らすが良い・・・!」

ミオアイコン

「それは・・・」

ミオとナイトアイコン

「断る!」

ミオは残された力をしぼり刀をかまえ、そしてナイトもまた風をまとった剣を具現化ぐげんかさせた・・・。

ミオアイコン

「ナイト・・・真ん中の頭」

ナイトアイコン

「あぁ、相当かたいみたいだな」

ナイトアイコン

「・・・どうする?」

ナイトはミオの傷に視線を向けた・・・。

ミオアイコン

「取りえず・・・」(れるやつ全部・・・)

ミオとナイトアイコン

る!」

ナイトアイコン

「だけど・・・大丈夫なのか?傷・・・」

ミオアイコン

「大丈夫・・・まだやれる」(音が聞こえればまだ私は何とかなる・・・いや・・・やるしかない)

ミオアイコン

「ナイトこそ大丈夫なの?」

ナイトアイコン

「俺は大丈夫、敵が少しひるんだからそこまで深くない」(少ししびれてる気がするけど・・・)

もはや2人の会話はほぼ意地の張り合いにしか見えない・・・。

ナイトアイコン

「俺は上の方の頭を」

ミオアイコン

「助かる・・・」(これが最後のチャンス・・・)

2人は一瞬いっしゅん顔を見合わせいきおいよくけ出した。

大蛇の頭7アイコン

何故なぜだ・・・何故なぜあれ程の傷を負っている人間がこの速さで動ける!!?」

ミオアイコン

「火事場の馬鹿力ってやつ?」

大蛇が困惑こんわくする間に2本の首を落とすミオ。

ナイトアイコン

「お前らの敵は今は1人じゃない!」

そう言い素早く後方へ回り込み残りの首を切り落とす・・・。

最後に残ったのは、あの一番かたい中央の頭だった・・・。

大蛇の頭3アイコン

「どうした?我の頭は落とさないのか?」

ナイトアイコン

「いや、お前はここで倒す!・・・」(多分・・・これしかない)

剣を持ち大蛇の頭上に飛び上がったナイトはむかとうと開けた口に思いっきり剣をげ込んだ・・・。

ミオアイコン

「・・・中々いい作戦」(これは効くかも知れない)

大蛇の頭3アイコン

「武器をわざわざ捨てるとは!?・・・?」

ナイトアイコン

「お前が食べたことに意味があるんだよ」

ヴァンリートアイコン

「ほぉ」(この使い方は面白いな)

ナイトアイコン

「例え外側の皮がかたくても内側の内臓まではそうそうかたくできないはず」

剣がまとっていた風が八岐大蛇やまたおろちの体を内側から切りきドサドサと音を立ててくずれ落ちた・・・。

だが喜んでいる余裕よゆうは一行には無かった。

ナイトがうでを押さえ座り込んでしまったのだ・・・。

ヴァンリートアイコン

「これは・・・先程の大蛇おろちの毒か!?・・・」

第4話 旋風せんぷう覚醒めざめ 後編(2)

チェリーアイコン

「かなり強い毒みたい」(私じゃ無理だ・・・)

そんなナイトの元へ傷を押さえながらミオが歩み寄る。

チェリーアイコン

「ミオ・・・」(止めても聞かないだろうし・・・他に助ける方法もない・・・よね)

ナイトのとなりこしを落としたミオは静かにうでの傷にれた・・・。

するとわずかだがそこから光があふれしばらくすると静かにその光は消えていき・・・そこにあったはずの傷も跡形あとかたもなく無くなっていた・・・。

ナイトアイコン

「!!!」

ヴァンリートアイコン

「!!!」

うでの傷が完治したことを確認し安心したのかミオはそのまま意識を失ってしまった・・・。

ナイトアイコン

「ミオッ!ミオッ!」

チェリーアイコン

「出血が多い・・・ナイト!あっちの木の近くに運ぶの手伝って!」(止血しないと・・・)

ナイトが木の近くにミオを運ぶ間、チェリーもミオの傷に手を当て先程と同じように治療しているようだった・・・。

しばらくして・・・そこから少し離れた場所でナイト達が様子を気にしながら話をする姿があった・・・。

ヴァンリートアイコン

「まさか・・・いやしの力まで使えるとは・・・」(普通じゃないとしてもあの力は・・・)

ナイトアイコン

いやしの力?」

ヴァンリートアイコン

「さっきお前がやってもらったやつだ」

ナイトアイコン

「あぁ、さっきの・・・か」

何となくナイトの表情が暗くなったのを感じたヴァンはあわてて話題を変えた。

ヴァンリートアイコン

「自己紹介がまだだったな、私はヴァンリートだ」

ヴァンリートアイコン

「象徴は嵐・・・」

ナイトアイコン

「俺はナイト、ナイト・リュミエール」

ヴァンリートアイコン

「改めてよろしく頼むナイト・・・、で話は変わるんだが・・・あの八岐大蛇やまたおろちにトドメを刺したあれは思いつきか?」

ナイトアイコン

「そうだけど・・・」

ヴァンリートアイコン

「だが、どうしてあれなら奴を倒せると?」

ナイトアイコン

「ただ外側が硬くて切れないなら内側から・・・と思っただけだ」

ヴァンリートアイコン

「それで、れたものを切り刻む風の剣を投げ込んだ・・・か」(見事にサイコロステーキになっていたな・・・)

そんな話をしている時だったチェリーが二人の元へやってきた。

ナイトアイコン

「ミオは?」

チェリーアイコン

「血は止まったよ、今は眠ってる」

眠っているミオの元へ向かったナイトは自分の着ていた上着を静かにかけた。

そうして戻ってきたナイトにヴァンが声をかける。

ヴァンリートアイコン

「お前も寝たほうがいいんじゃないか?」

ナイトアイコン

「だけど・・・」

チェリーアイコン

「敵が来ないか心配なんでしょ?でもそのことなら大丈夫、私達が見とくから」

ヴァンリートアイコン

「・・・・・・」(いいから寝ろ!)

ナイトアイコン

「うっ・・・分かったよ」

ヴァンの無言の圧力に・・・負けた・・・。

その後、ナイトが寝たのを確認してからずっとヴァンとチェリーは寝ずの番をしていたようだ・・・。

ヴァンリートアイコン

「チェリー・・・1つ聞きたいことがある・・・」

チェリーアイコン

「ん?何?」

ヴァンリートアイコン

「何故、ミオはいやしの力を使える?杖などの魔道具無しで使えるなど」

チェリーアイコン

「それは・・・」

ミオアイコン

「使えるから使っている、その説明じゃ足りない?」

ヴァンリートアイコン

「!!」

チェリーアイコン

「ミオ!まだ動かないほうが・・・」

ミオアイコン

「大丈夫、お陰で傷もだいぶ良い」(それでも最近・・・傷の治りが悪い・・・)

そう言うと自分にかけられていた上着をナイトにそっとかけ返した。

ヴァンリートアイコン

「そこまで言うなら・・・深くは聞かんが・・・」(しかし・・・そもそもあの力は人間の身では負担が大きすぎる・・・それほどの覚悟をして使っていると言うのか?)

ヴァンは意を決したようにミオにたずねる。

ヴァンリートアイコン

「ならばミオ、もう1つ聞きたいことがある・・・」

ヴァンリートアイコン

「お前は・・・ナイトを置いていくつもりなのか?」

ミオアイコン

「!!!」

ミオアイコン

「そのつもり・・・」

ミオアイコン

「私といてもナイトにメリットはない、危険な目にうだけ・・・」(私は1人で良いの・・・)

ミオアイコン

「人は私をおそれる・・・きっと・・・いずれナイトも離れていく・・・」

ヴァンリートアイコン

「私と契約けいやくし、敵と戦える力を得た今・・・近くにいる必要もない・・・か?」

「ミオ、お前からすればそれがベストな判断なのかも知れない・・・だが」

ヴァンリートアイコン

「私から見れば今のナイトはお前がいなければ力の全てを出し切ることはできないように見える・・・」

ヴァンリートアイコン

「そんな状態で置いていけば・・・どうなるか」

ミオアイコン

「それは私の血のことを知らないから・・・」

ヴァンリートアイコン

死を招く血ファントムブラッドのことか?」

ミオアイコン

「!・・・知っているなら引き止める理由はないでしょ・・・?」

ヴァンリートアイコン

「確かに厄介な性質だが・・・すでに一度ナイトは奴らにねらわれた・・・そうなった以上今後の戦いはけようもないだろう」

ミオアイコン

「・・・必ずしも・・・敵は魔族まぞくってわけじゃないの・・・」

ヴァンリートアイコン

「何も別にすぐに決める必要はないはずだ、それにお前の傷がえてからでも遅くはないだろう?」

チェリーアイコン

「私ももう少しナイトの様子を見た方がいいと思う・・・」

ミオアイコン

「私は・・・」(どうすべきなんだろう・・・)

ミオアイコン

「分かった・・・私も少し考えてみる事にする」(明日まで・・・明日までで・・・)

そんなミオ達を日の出の薄明かりが照らしていた。